おもしろかった安価やあんこスレを中心に、やる夫スレのまとめをしているブログです
1457 : ◆jPhj0E6dTg :2018/06/10(日) 21:04:49 ID:Rl8X8teG
ちょいと芳しくないので、今日はお休みさせていただきます
いやぁ、前回は激動でしたね(霧並感)


1458 : ◆jPhj0E6dTg :2018/06/15(金) 22:30:27 ID:/yhljf4N
 売り言葉に買い言葉、というやつだった。

 大船島が南区角、その外周部のとあるお店、海の家”魚野郎”店内に、大声が響き渡る。
「できらあっ!!」
 席を立って叫んだのは、日焼けをしたエルフの男であった。
「よせ、ジョー!」という静止の声を「良いんだよおやっさん!」と振り切って、
ジョーと呼ばれた、”海人”とでかでかと書かれたシャツと海パンの男は、もうひとりの男へと詰め寄った。
「俺ならそんな雑魚どもよりも安く、確実にランを遂行出来るって言ったんだよ!」
 去ろうとしてた、仲介屋の――場違いなビジネススーツを着こなした――男は振り返り、ジョーを鼻で笑う。
「ほう、これは面白い……ですが、ウチの依頼したランナーにケチをつけられるのは困りますね……」
 ふうむ、と仲介屋の男は顎に手を当て、しばし悩む素振りを見せる。
「ならば、一人分の報酬で、単独のランを遂行して貰いましょうか。」
「え!?そんな報酬でオレ一人でランを!?」



「おっかしいな……いや、この俺がいつもこうやり込められるんだ。きっとあの野郎はやり手の交渉人に違いねえ……」
 あんな挑発をされれば、誰だってこうなっちまう。と、つぶやきながらジョーはランの準備を進めて居た。
 余談であるが、先に挑発したのはジョーであり、当の本人の交渉力は”苦手”と呼ばれるレベルである。
「これは持った、これは……要らねえ、これは持っておくか……」
 ぽいぽいっと複雑そうな機械を懐に仕舞ったかと思えば、2丁の拳銃の片方を布団に放り投げ、片方をホルスターに入れたりと、装備の取捨選択を行っていく。
 これはジョーのいつもの準備風景であるが、それはそのはず。ジョーは実働要員としては割と”何でも屋”よりのランナーであり、
その役割に応じた装備を保有する物持ち――衝動買いを抑えられず、不要なものを捨てられないほど自制心が弱いともいう――でもあり、
そして何より、大荷物では彼の”得意分野”を活かせないという死活問題でも有るからだ。
 そして数分の後、最後にモノフィラメントチェーンソーを背負い、準備を完了。
 荒れた部屋の隅にある神棚にばちんと柏手一つ、「行ってくる」と誰も残らない部屋に声をかけジョーは影へと走りに出した。

1460 : ◆jPhj0E6dTg :2018/06/15(金) 22:56:17 ID:/yhljf4N
 ざばん、ざばぁんと聞こえる波の音。やや離れたところから聞こえてくる、荷降ろしかなにかの日雇いどもの声と作業音。
 ここは、いくつもの船を連結して作られた”大船島”のふち。
 人気は少なく、前へと歩めば大いなる海へと飛び込める、ジョーにとって秘密のポイント。

「イッチニ、サンシ……ゴーロク、シチハチ……」

 GPSにより居場所、より正確に言えば座標は分かるが、入り組んだ違法建築区画故にルートが分からないと、仲介屋の男はそう言っていた。
 だが、ジョーはそうは思わなかった。
 「入り組んでる?そりゃあ海上の話だろうよ。中心部ならいざしらず外周部なんだぜ? まっすぐいきゃ良いんだよ、まっすぐいきゃ」

 そう、ここは大船島。船を繋げてできた島。地面……否、床のその下は当然海が広がっている。
 そして、海は”達人(アデプト)”であるジョー・東にとってのメインフィールドだ。


 エルフの日本男児。ジョー・東は覚醒者である。
 大いなる海による試練に打ち勝った彼は、海の力と、海とより親しみ同化する力を得、
 ”スイミングアデプト”となったのだ。


 「よし、座標……ってか距離と方向は掴んだ。あとは適当なところから上がりゃあ良い」
 しっかし入れ込んだ娼婦を考えなしに浚ったチンピラねぇ。とそのチンピラのバカっぷりに顔を顰める。
 「そんななら、ハッカーだのが居るとは思えねえが……」
 まあ念の為だ、とコムリンクの電源を切り、ポケットへと放り込む。
 
 パチン、とポケットのボタンを閉め、ジョーは手のひらで海をひとすくい。
「さて、今日はどうだ?」とそのまま口に含み、ひとしきり味わうとペッと吐き出した。

「チッ、埠頭が近いからな。まあこの程度の汚染は想定通りか」

 汚染されていないかを味覚で確認し、伸びを一つ。
 そのままジョーは、海へと飛び込んだ。

1461 : ◆jPhj0E6dTg :2018/06/15(金) 23:03:45 ID:/yhljf4N
中編に続く。

1462 : ◆jPhj0E6dTg :2018/06/15(金) 23:09:51 ID:/yhljf4N
ひゃーやっと休みじゃぁ!
……5日分の疲れを2日でとれというのはおかしくないですかね!

おやすみ!








1465 : ◆jPhj0E6dTg :2018/06/16(土) 21:21:12 ID:qi6WqmJ0

 海を潜ればそこは幻想的な世界……というわけではない。
 なにせ太陽光は船によって遮られ、(多くの住民はきっちり循環させているとは言え)不法居住どもの垂れ流す生活排水によって汚れている。
 妙な海流によって流されそうになることも、海を泳ぐ怪生物も、それらや船底からの侵入者を防ぐセキュリティもある。
 海はかくも危険なところである、とジョー・東は考える。
 実際の海自体の驚異は、先の例では海流と怪生物程度で有るのだが……。閑話休題。

 ジョーは時折やってくる、先の怪生物やどこぞの企業か意識高い系の住人が仕掛けたセンサー・セキュリティを掻い潜りながら、
大船島の隙間から差し込んで来る僅かな光を、生来の低光量視野で補いつつ目的の場所へと進む。

「っ……!」

 ……たまに、センサーに引っかかって水中銃で撃たれるのはご愛嬌。
 偶然にも外れたのだ。そういう事にしておこう。ちょいミスなんてミスじゃねえし……と。
 そして、1.5キロほど泳いだ頃、ジョーの正確な方向感覚と距離感が、目的地がこの上で有ると告げた。

「……」

 キョロキョロと周囲を見渡し、船の内部に入り込める場所を探す。
 最悪、船底に穴を開けりゃあ良いか……と(短気な)ジョーが考え始めるほどの時間が経つ。
 はたして、都合の良さそうな場所は見つかったのであった。



 そこは、おそらく違法繋留された、老朽化した船の一室であった。
 そう、例え老朽化した結果穴が空き、部屋の”容量の”半分ほどが海に沈んでいようと一室は一室だ。
 その部屋の中、わずかに残った空気を吸いつつ、ジョーは呟く。

「やっべ、ドア開かねぇ」

 原因は水圧か、老朽化による歪みか、はたまた別のなにかか。扉が開かなくなっていたのだ。
 めんどくせぇなぁと頭をぼりぼりと掻き、背負っていたモノフィラメントチェーンソー――潜水中ももちろん背負っていた――を構える。
 そして、ドアの接合面に刃を当てる……前に、壁に耳を当て、コンッコンッと二回ノック。

「誰も居ねぇな……ついでにこの向こうも浸す……がぼっ!?」

 グリッチド!二回目の向こう側の様子を探ろうとしたその時、おそらく扉の耐久度が限界を迎えたのだろう!
 扉は破壊され、向こう側から流れ込んで来た海水により、ジョーは押し倒されてしまったのであった。

「あ、ああぁぁ!?チェーンソーがぁ!?」

 不幸は続くもの、体勢を崩したその拍子にモノフィラメントチェーンソーを手放してしまい、それはよりにもよって穴が空いていたその部分であり……。
 ジョーは沈みゆくモノフィラメントチェーンソーを追って、慌てて泳ぎ出すのであった。

 果たして、ジョーは間に合うのであろうか……?

1466 : ◆jPhj0E6dTg :2018/06/16(土) 22:11:05 ID:qi6WqmJ0
 船内を密やかに黒い影が動き回る。

(あーくっそ、余計な体力使っちまった……)

 それは、濡れたその身体を犬のようにブルブルと身体を振って乾かし、ようやく船内探索を開始したジョーだ。
 その背中にモノフィラメントチェーンソーは……ある。ジョーは間に合ったのだ。

(チッ、さっさと行かねえとな……この足音は人か)

 船内の先住民らしき足音を避け、時にはこっそりと通り過ぎ、時には周囲に誰も居ないことを確認したうえでの
モノフィラメントチェーンソーによる大胆な”改築作業”に取り掛かり、徐々に目的地へと近づいていく。
 えてして迷いそうになる複雑な船内であるが、そこはそれ道は忘れて感覚は確かなジョーである。彼の足取りに迷いはない。
 そうして、8割ほど踏破した辺りであろうか、ジョーの知覚がとある独り言を捉えた。

「ちっ、アニキも心配性で行けねえな。たかだが娼婦ひとり盗んだだけだろ?
わざわざこんなところまで追うやつは居ねえだろうし、居てもここまで来れねえだろってのになんで見張りなんか……」

 ビンゴだ。というかここまで分かりやすいチンピラ(バカ)は存在したのか、とジョーは震えた。
(幸いにも相手はこちらに気づいてねえし、銃を持っただけのチンピラに見える。ああ、これなら問題ねえ)
 奇襲を討って、物音立てずにぶっ倒す。そう決意を堅める。
 そして、ジョーは呼吸を止め、己の中にある感覚の波をより研ぎ澄ます。――一時的に己を強化するというアデプトパワーだ。

 わずかに上昇した反応力を支えに、飛び出したジョーは見張りのチンピラへと駆ける。
(まだ気づくんじゃねえぞォ!!)
 5メートル、3メートル、2メートル、1メートル……そして、クロスレンジ。
 呆けた顔をしたチンピラの土手っ腹にジョーは容赦のない強打を打ち付ける。

「ごぽいっ!?」

 と、チンピラは僅かに気持ちの悪い悲鳴をあげ、そのまま何が起こったかも分からぬまま、眠りについた。

「へっ雑魚が調子に乗りやがってよ。ハーハッ……ってあぶねぇあぶねぇ」
 まだアニキとやらが残っているのだ、と笑い声を上げそうになった声を潜めて気を引き締める。
 気絶したチンピラにプラスチック製の手錠をかけ、そいつが守っていた扉へと向き直る。

「ここが正念場……のハズだな」

 防音性能が優れているのであろう、僅かに聞こえる娼婦のものであろう嬌声とそれに交じる二人の男の声を確認し、
ジョーは自分にコンバットドラッグ”ジャズ”を打つ。

「さぁ……行くぜぇ。てめぇら、いつまでも調子に乗ってんじゃねぇ……!」

 アストラルの知覚を開き、扉を蹴破ると同時に熱煙幕弾を投げ入れる。
 さあ、戦いの始まりだ。とジョーは部屋へと殴り込む。



 ――そして、これがあのいけ好かない仲介人が持ってきた「ラン」であることを思い出す。

ジョーのアストラルの視界に飛び込んだのは、倒れ伏す娼婦のものであろう輝きと、チンピラのものであろう輝き。そして……

「覚醒者……二人も、だと!?」

 魔法的な輝きを持つ2つのアストラルの輝きであった。


後半へ続く。
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